「スマホの画面の向こうにいる相手を、心から信じてしまった」――SNS型投資詐欺やロマンス投資詐欺の被害者は、決して情報弱者ばかりではありません。むしろ、時間をかけて信頼を築かれた末に、冷静な判断力を奪われていくのがこの手口の恐ろしさです。私自身、かつて投資コンサルを名乗る業者に、数か月かけて信頼を作られた末にだまされました。手段がSNSに変わっただけで、心を動かすロジックは、当時と驚くほど同じです。
この記事では、いま急増しているSNS型投資詐欺・ロマンス投資詐欺の最新手口を整理し、どこで見破れるのかを解説します。「自分は大丈夫」と思っている人こそ、読んでほしい内容です。
はじめに ― 被害は「過去最悪」を更新し続けている
警察庁のまとめによると、2025年(令和7年)のSNS型投資詐欺とロマンス詐欺の被害は、いずれも過去最悪を大きく更新しました。特殊詐欺を含めた被害額は、年間で3,000億円を超える規模に達しています。
- SNS型投資詐欺:認知件数およそ9,500件、被害額はおよそ1,275億円
- ロマンス詐欺:認知件数およそ5,600件、被害額はおよそ552億円
(出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」。数値は暫定値・確定値で変動する場合があります。)
被害の中心は40~60代。かつて「詐欺は高齢者がターゲット」と言われていましたが、いまや働き盛りの世代が、まとまった資産をSNS経由で失っているのです。生成AIによる画像・文章の巧妙化も加わり、手口は年々見抜きにくくなっています。
第一章 ― 手口の全体像:入り口はすべて「SNS」
SNS型投資詐欺・ロマンス投資詐欺は、細部はさまざまでも、大きな流れは共通しています。
- 接触:SNS広告、ダイレクトメッセージ、マッチングアプリなどで接点をつくる
- 信頼構築:数日~数か月かけて、専門家・成功者・恋人として信頼を積み上げる
- 誘導:投資アプリやサイト、LINE・Telegramグループへ誘導する
- 入金:少額から始めさせ、「利益が出た」と画面上で見せて増額させる
- 出金拒否:出金しようとすると「税金」「手数料」を名目に追加入金を要求し、最後は連絡が途絶える
この「少しずつ信頼させてから、一気に刈り取る」構造は、私がだまされた投資コンサル業者とまったく同じです。手口の本質は、ツールが変わっても変わりません。
第二章 ― 有名人・著名人「なりすまし」広告
いま最も被害を広げているのが、著名な投資家・経営者・タレントになりすました広告です。YouTubeのバナー、Instagram・Facebookの広告、DMなどから「○○さんの無料投資講座」へ誘導されます。
本人の写真や動画が使われ、生成AIによってあたかも本人が推奨しているかのように加工されているケースもあります。「あの有名人が勧めているなら」という安心感が、判断の入り口を突破されるきっかけになります。
「あの有名人、著名人も御用達」――これは私がマルチ商法の説明会で何度も聞いたフレーズでもあります。権威を借りて信じ込ませる構造は、昔から一切変わっていません。
公的機関や本物の金融事業者が、SNS広告やDMで個別に投資へ勧誘することはありません。「有名人の名前+無料+LINE登録」の組み合わせを見たら、まず疑ってください。
第三章 ― ロマンス投資詐欺:恋愛感情を「入金の理由」にすり替える
ロマンス投資詐欺は、マッチングアプリやSNSで知り合った相手が、恋愛感情を育てながら投資へ誘導する手口です。典型的な流れはこうです。
- マッチングアプリ・SNSで出会い、毎日のやり取りで親密になる
- 「将来一緒に暮らすため」「二人の資産をつくるため」と投資を持ちかける
- 相手が使っているという投資アプリを紹介され、少額から始めさせられる
- 画面上では利益が出ているように見え、信頼と期待が増幅する
- 大きく入金した後、出金できず、相手も消える
恐ろしいのは、被害者にとってそれは「詐欺への入金」ではなく「愛する人との共同作業」だと感じられている点です。だからこそ、周囲が止めても耳を貸せなくなります。相手と直接会ったことがない、ビデオ通話を巧みに避ける、といった場合はとくに注意が必要です。
第四章 ― LINE・Telegram「投資グループ」の演出
SNSから誘導された先に待っているのが、LINEやTelegramの「投資グループ」です。グループ内には「先生」と、利益報告を書き込む「参加者」がいます。
しかしこの参加者の多くはサクラ(仕込み)です。「今月も○○万円の利益が出ました」「先生のおかげです」という書き込みが並び、自分だけが乗り遅れているような焦りを生み出します。これは、私が経験した投資コンサルが見せてきた「過去の的中履歴のスクリーンショット」と同じ演出です。数字や実績の“見せ方”で信じ込ませるのが常套手段なのです。
第五章 ― なぜ、賢い人ほどだまされるのか
「自分はだまされない」と思っている人ほど危ない、と私は身をもって知っています。私がだまされたのは、決して一目で怪しい業者ではありませんでした。きちんとしたサイト、市場分析のメルマガ、無料相談――数か月かけて「ここなら信頼できそうだ」と自分から思い込んでいったのです。
詐欺師は、以下の心理を巧みに突いてきます。
- 返報性:無料で情報や親切をもらうと、断りづらくなる
- 一貫性:一度少額を入金すると、判断を正当化するために続けてしまう
- 社会的証明:ほかの参加者が儲かっていると、自分も、と思う
- 希少性・時間切迫:「今だけ」「あと数名」で冷静な検討を奪う
知識の量ではなく、心理の隙を突かれるのです。だから「賢いかどうか」は防御になりません。
第六章 ― 見破るための7つのチェックポイント
次のうち一つでも当てはまったら、立ち止まってください。複数当てはまるなら、ほぼ詐欺と考えて差し支えありません。
- SNSの広告・DM・マッチングアプリがきっかけで投資の話が出た
- 「必ず儲かる」「元本保証」「高い的中率」など、うまい話を口にする
- 会ったことのない相手や、匿名の「先生」に送金を求められる
- 入金先が個人名義の口座や暗号資産のウォレット
- 出金しようとすると税金・手数料の名目で追加入金を求められる
- LINE・Telegramのクローズドなグループに囲い込まれる
- 金融庁に登録のない業者、または登録の有無を確認できない
投資を扱う事業者が正規に登録されているかは、金融庁のサイトで確認できます。名前が出てこない、確認できない業者への入金は、絶対に避けてください。
もし、だまされてしまったら
被害に気づいたら、一刻も早く動くことが回収の可能性を左右します。まずは入金先の金融機関へ連絡し、口座凍結を求めると同時に、警察と公的窓口へ相談してください。だまされたお金を取り戻せるのかについてはこちらの記事にまとめています。
そして、絶対に気をつけてほしいのが二次被害です。「被害金を取り戻します」とうたう業者や、詐欺被害特化を名乗る偽の弁護士事務所が、傷ついた被害者をさらに狙ってきます。私も返金を求めて検索するうちに、あやうく偽弁護士に着手金を払いかけました。焦っているときこそ、即決しないでください。
困ったときの相談先
- 消費者ホットライン「188」/国民生活センター・全国の消費生活センター
- 警察相談専用電話「#9110」/警察庁
- 消費者庁(消費者トラブルの注意喚起)
- 金融庁(無登録業者の確認)
おわりに
SNS型投資詐欺もロマンス投資詐欺も、手口の新しさに目を奪われがちですが、芯にあるのは「時間をかけて信頼させ、判断力を奪う」という古典的な構造です。ツールがオークションの掲示板からSNSに変わっても、私をだました手口と本質は同じでした。
だからこそ、防御も普遍的です。うまい話は疑う。会ったことのない相手に送金しない。即決しない。焦らせる相手ほど信じない。この4つを胸に刻んでおくだけで、被害の入り口の多くは塞げます。画面の向こうの「信頼できそうな人」を、どうか一度、疑う勇気を持ってください。
本記事は運営者個人の体験と、公表された統計・注意喚起情報の整理であり、法的・金融的助言ではありません。統計値は今後の確定・訂正で変動する場合があります。特定の個人・法人を非難する意図はありません。


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